December 02 2010
わが家の二階に上る冬の旅
高橋 龍
しばしば雨戸で閉ざされた二階を見かけることがある。夜になると一部屋に灯りがともるので誰かが暮らしていることはわかるが、家族が減り二階へ上がることもなくなっているのだろう。掲句はシューベルトの歌曲『冬の旅』が踏まえられているように思う。『冬の旅』は失意の青年がさすらう孤独な旅がテーマだが、その響きには灰色に塗り込められた暗いイメージが漂う。遠くへ行かなくとも我が家の二階に上るのに寒々とした旅を感じるのは、そこが日々の暮らしからは遠い場所になっているからではないか。小さい頃人気のない二階にあがるのは昼でも怖かったけれど、家族がいれば平気だった。そう思えば誰も住まない二階では障子や机も人の生気に触れられることなく冬枯れてしまうのかもしれない。『異論』(2010)所収。(三宅やよい)
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