November 12 2010
墓碑銘を市民酒場にかつぎこむ
佐藤鬼房
無季の句。昭和二十六年刊行の句集に収録の作品だから、まだまだ戦後の混沌と新しい社会への希望が渦巻いていた頃。墓碑銘を市民酒場にかつぎこむイメージは、市民革命への希求がロシア革命への憧憬を根っこに持っていた証だ。強くやさしい正義の赤軍と悪の権化の独裁との闘い。この頃の歌声喫茶で唄われたロシア民謡。赤提灯を市民酒場と呼び、卒塔婆を墓碑銘と呼ぶモダニズムの中に作者の青春性も存した。60年を経て、プロレタリア独裁も搾取も死語となった今どういう理想を僕らは描くのか。どういうお手本を僕らは掲げるのか。或いはそんなものは無いと言い放つのか。『名もなき日夜』(1951)所収。(今井 聖)
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