November 06 2010
あたたかく靄のこめたる紅葉かな
深川正一郎
霧よりやや視界がよいのが靄、ということだが、霧は走るけれど靄は走らない、とも思う。この句の場合、山一面の紅葉が朝靄に覆われているのかもしれない。が、私には、湖の対岸にくっきりと見えていた一本の鮮やかな紅葉に今朝はうっすらと靄がかかっている、という景色がなんとなく浮かんだ。そこに朝日が差しこんでくると、湖面はかすかな風を映して漣が立ちはじめ、紅葉の彩をやわらかくつつんでいた靄はしだいに薄れていく。あたたかな靄の晴れてゆく湖畔で、作者は行く秋を惜しんでいるのかもしれない。『正一郎句集』(1948)は、川端龍子の装丁がしっとりとした作者の第一句集。四季別にまとめられているがその扉の、春、夏、秋、冬、の文字だけが水色で美しい。(今井肖子)
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