G黷ェ゙船句

October 26102010

 日おもてに釣船草の帆の静か

                           上田日差子

釣船草
細い茎からモビールのように下がる花が船のかたちに見えるということから釣船草という名がついたという。先日、姨捨の棚田を歩いたおり、日当りのよい斜面にキツリフネが一面に咲いていた。花を支える茎があまりに細いため、強い風が吹いたら、ちぎれてしまうのではないかという風情は、壊れやすい玩具のように見える。また、あやういバランスであることが一層あたりの静けさを引き寄せていた。掲句の景色は、日射しのさざ波に浮く船溜まりのように、釣船草の立てた華奢な帆になによりの静寂を感じているのだろう。花の魅力は後方にもある。写真を見ていただければわかるが、どの花にもくるんとしたくせっ毛みたいな部分があって、これが可愛くてしかたがない。種は鳳仙花のように四散するという。静かな花の最後にはじけるような賑やかさがあることに、ほんの少しほっとする。〈寒暮かな人の凭る木と凭らぬ木と〉〈囀りの一樹ふるへてゐたるかな〉『和音』(2010)所収。(土肥あき子)




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