September 20 2010
敬老の日のどの席に座らうか
吉田松籟
歳をとるまでは気がつかなかったが、世の中にはあちこちに高齢者のための配慮が見られる。運動会などでも敬老席があったりする。なかでいちばんポピュラーなのは電車やバスのシルバー・シートだろう。句の作者がどういう場所にいるのかはわからないけれど、どこにいるにせよ、こういう戸惑いの気持ちは理解できる。還暦を過ぎたころからはじまる戸惑いである。それくらいの年齢になると、自分では若いと思っていても、客観的にはどう見えるのかがよくわからない。わからないから、いつも「どの席に座らうか」と迷ってしまう。電車に乗ってもシルバー・シートに座るべきなのか、それとも一般席に座ればよいのかと、余計な心配をする羽目になる。一般席に座ればその分だけ若い人の席が減るわけだし、かといってシルバーに坐るのは図々しく思われるかもしれない。このようになんとも悩ましい期間が、誰にも数年はつづくのだ。そんな年齢の心情をさらりと巧くとらえている。『新版・俳句歳時記』(2001・雄山閣出版)所載。(清水哲男)
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