September 17 2010
秋の夜のラジオの長き黙つづく
山口誓子
こんな句を昭和19年に作ることができた誓子の頭の中はどういうことになっていたのか。型の上のホトトギス調はない。ここには文語か口語かの識別の表現はない。季語はあるが秋の夜の定番情緒がテーマに置かれているわけではない。いわゆる従来の俳句的情緒も皆無。それでいて昭和初期の現代詩を模倣したモダニズムもない。ベレー帽などかぶったモボ、モガのダンディズムが見られない。ここで見出されている「詩」は完全に誓子が初めて俳句にもたらしたものだ。新しいポエジーなのに難解さは無い。ああ、こんなことが俳句で言えたのだと、言われてみると簡単なことのように思える。誰も出来なかった「簡単」なこと。まさしく当時の俳句の最前線に立った誓子のポエジーは今でも最前線のままだ。『激浪』(1944)所収。(今井 聖)
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