August 24 2010
八月のしずかな朝の出来事よ
鳴戸奈菜
日本人にとって8月の持つ背景は深く重い。上五に置かれた「八月」の文字は、次の言葉を待つわずかな間にも胸を騒がせ、しくと痛ませる効果を持ってしまう。先の戦争がことに大きな影を落していることは確かだが、そこにとらわれ、身動きできなくなっているのではないかと、世界の8月の出来事を見渡してみた。すると、西暦79年の本日、ポンペイでは朝から不気味な地鳴りが続き、昼頃ヴェスヴィオ火山の大噴火によって消滅した日であった。この時節が持つやりきれなさと屈託は、もしかしたら全人類、世界的に共通しているのかもしれない。作品は〈山笑うきっと大きな喉仏〉〈あのおんな大の苦手と青大将〉の持ち前の明るくユニークな作品にはさまれ、饒舌のなかにおかれた静寂の一点でもあるように、ゆるぎない光りを放っている。俳誌「らん」(2010年・季刊「らん」創刊50号記念特別号)所載。(土肥あき子)
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