July 29 2010
夏まんなか そは 幼年の蒸気船
伊丹公子
いつもは静かな平日の昼間に子供たちの遊ぶ声が聞こえてくると、ああ、夏休みなんだなぁと実感する。その声に40日間の暇をごろごろ持て余していたむかしを思った。今のように気楽に旅ができる時代と違い、家族で遠出する機会なんてほとんどなかった。白い煙を吐きながら未知の場所に旅立つ船や、機関車といった乗り物は子供にとっては憧憬の的だった。幼い頃、どれだけ高ぶった思いでこの大きな乗り物を見上げたことだろう。作者にとっても蒸気船は幼年の夏を印象付ける象徴的存在なのだろう。真っ青な夏空に浮かぶ雲を仰ぎ見るたび幼子の心に戻って、懐かしい蒸気船を想うのかもしれない。『博物の朝』(2010)所収。(三宅やよい)
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