June 292010
瓜食んで子どもら日照雨見てゐたり
足立和信
日照雨(そばえ)は細照雨とも書き、太陽が出ているのに降る小雨のこと。掲句では、きらきらと明るい降雨が、子どもたちの遊びのちょっとした休憩となって、縁側あたりに並んで雨があがるのを待っている。子どもにとって苦手な雨や、退屈な待ち時間でありながら、がっかりした様子が見えないのは、彼らにもこれがすぐ止むことが分かっているからなのだろう。「そばえ」には戯れたり甘えたりする意味もあるというから、子どもたちには一層親しい雨である。外の遊びを半ばで中断されたために体中にまとわりついている熱気が、瓜で冷やされていく様子は、無尽蔵のパワーメモリがみるみる補充されていくかのようだ。本句集の序文で森澄雄氏は掲句を取りあげ、山上憶良の「瓜食めば子ども思ほゆ栗食めばまして偲はゆ いづくより来りしものぞ まなかひにもとなかかりて安眠し寝さぬ」の子を思う歌が敷かれていると書く。そして、この万葉集の長歌に続く反歌こそ、ことによく知られた「銀(しろがね)も金(こがね)も玉も何せむに まされる宝 子にしかめやも」である。とりたてて特別でない日常の風景が、親にも子にも忘れがたい一瞬となって、それぞれの記憶に刻印される。『初島』(2010)所収。(土肥あき子)
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