June 19 2010
息づかひ静かな人と蛍の夜
茨木和生
同種の蛍は、たくさんいても同じリズムで光るのだという。まだ薄明るい空を時々仰ぎながらじっと待っていると、ひとつ、またひとつ光り始め、気がつくと蛍の闇の中にいる蛍狩り。そのリズムが、熱を持たない光を、蛍の息づかいのように感じさせるのだろう。残念ながら私は、子供の頃近所の川で見たとか、句友数人と蛍狩りに行ったとかいう記憶しかない。この句の作者は、二人並んで同じ蛍を見ながら、同じ時間を過ごしていることに、同じ空気を吸っていることに、静かな喜びを感じている。まわりにたくさん人がいて話し声がしていても、作者に聞こえるのは目の前の蛍の鼓動と、隣にいる人のかすかな息づかいだけ。女流作家の蛍の夜の句とはまた違った艶を持つ句、遠い記憶の中の忘れられない蛍の夜、なのだろうか。『畳薦』(2006)所収。(今井肖子)
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