June 13 2010
香水の一滴づつにかくも減る
山口波津女
季語は香水、夏です。香水壜の形や色の美しさはむしろ、秋の落ち着いた雰囲気につながるものがありますが、汗をかく季節に活躍するものということで、夏の季語になったのでしょう。それにしても、海外旅行の土産に、どうしてあんなに香水が幅を利かせているのだろうと思ったことがあります。考えてみればわたしなど、空港の免税店だけでしか香水と遭遇する機会はありません。もちろん使ったことなどありません。それでも、句の意味するところは感じ取ることができます。これまで、かすかな一滴づつしか使ってきていないのに、気がつけば壜の中はずいぶん減っています。自然に蒸発したわけでもなく、ほかの家族が無断で使った様子もないのであれば、この減りは間違いなく、ホンの一滴の集まりであるのだなと納得し、驚いてもいるわけです。読者は当然のことに、この一滴を、「時の推移」そのものに置き換えようとします。過ぎ去った日々を思うときに、もうこれほど月日は経ってしまったのかと、自分の年齢にあらためて驚いてしまう。そんな感情とつながっています。『俳句のたのしさ』(1976・講談社)所載。(松下育男)
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