降ったり晴れたり寒かったり暑かったり…。春ってこんなだったったっけ。(哲




20100408句(前日までの二句を含む)

April 0842010

 羽のある蛇を描きて日永かな

                           有馬朗人

野火、メキシコと題された中の一句。羽のある蛇はアステカの遺跡の壁画に残された絵なのだろうか。幾何学模様がエキゾチックなリズムとともに描き出されていることだろう。こうして「日永」という季語を合わさってみるとのんびりした春の季感を超えて、もっと長い長い時間へ巻き戻されてゆくようだ。羽のある蛇は人間が自分と動物・植物を分かつことなく畏敬の念をもって交わっていた時代、身近にいる蛇が空中を飛ぶとき羽が見えたのかもしれない。描かれた壁画を見ているのだろうが、「蛇を描きて」という言葉に眼の前で彩色しているのを眺めている気分になる。きっと作者は画を眺めながらワープしているのだろう。この句集ではそんな時間的混沌が季語と合わさって不思議な世界を紡ぎだしている。「春の雨悪魔の舌をぬらしけり」これも寺院の屋根にある彫像なのだろうが、おどろおどろしく長い舌を出して耳まで裂けた口でにやっと笑う悪魔の顔が春の雨の情緒を怪しいものに塗り替えている。『鵬翼』(2009)所収。(三宅やよい)




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