サリンジャー死す。彼の才能にびっくりしたのは『フラニーとゾーイ』。(哲




20100130句(前日までの二句を含む)

January 3012010

 一筋の髪が手に落ち春隣

                           山西雅子

のところの東京は、突然Tシャツ一枚で歩けるような陽気かと思えば翌日はダウンジャケットを着込む有様で、次々咲く近所の梅に、明日はまた真冬の寒さだからその辺で止めておかないと、と思わず話しかけたくなるほど。春待つ、のひたすらな心情に比べて、春隣、には、ふと感じて微笑んでしまうほのぼの感がある。そう考えるとこの句の髪は、作者自身の髪ではないのかもしれない。たとえば子供の髪をとかしてやっていて、やわらかく細い髪が手のひらの上で光っているのを見た時、そんな「ふと」の一瞬が作者に訪れたのではないだろうか。そういえば重なっているイ音にも、口元がついにっこりしてしまうのだった。〈マフラーを二巻きす顎上げさせて〉〈冬木に根あり考へてばかりでは〉『沙鴎』(2009)所収。(今井肖子)




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