January 092010
味噌たれてくる大根の厚みかな
辻 桃子
文句なしに美味しそう。〈大根は一本お揚げ鶏その他〉の句と並んでいるが、いずれもとにかく美味しそうだ。この句の場合、味噌たれてくる大根、ときて、煮込んだ大根に味噌がかかっているのはわかるけれどまだそれだけで、厚みかな、としっかりした下五であらためてとろっと味噌がたれる。その絶妙の感覚が、こういう美味しそうな俳句の、写真にも文章にも真似のできない味わいだろう。じっくりこっくり煮込んだ大根に箸をゆっくり入れる。その断面にたれてくる味噌の香りと大根の匂いや湯気までが、それぞれの読み手の頭の中に映像として結ばれて、そのうちの何人かは、あ〜今日は大根煮よう、と思うのだ。この作者の、これまで増俳に登場した句には〈秋風やカレー一鍋すぐに空〉〈アジフライにじゃぶとソースや麦の秋〉などがあり、料理上手な作者が思われる。「津軽」(2009)所収。(今井肖子)
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