January 072010
生きてゐる仕事始めの静電気
守屋明俊
のんべんだらりと過ごした三が日を終えて、仕事が始まった。仕事納めの日から数えれば一週間しか経っていないのに昨年というだけで遠い距離が感じられる。正月休みというのは他の休みと違ってぽかっと大きな穴に落ち込んだような、浦島太郎のような心持ちになってしまう。ビルのエスカレーターを上がりやれやれとドアノブに手を触れた瞬間びりり、と軽い衝撃が伝わる。乾燥したこの季節に多い現象だけど、のびきった気持ちに喝を入れて仕事モードに切り替えよと言われているようだ。上五の「生きてゐる」の措辞は話し言葉にすれば「生きてるぅ??」と静電気に呼びかけられる感じだろうか。指に来た刺激が休みボケをたたき起こすようでなんとなくおかしい。「鏡餅テレビ薄くて乗せられず」「何たる幸グラタンに牡蠣八つとは」など日常の出来事が豊かな諧謔で彩られていて、おとなの味わいを感じさせる。『日暮れ鳥』(2009)所収。(三宅やよい)
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