年々松の内の晴れ着姿が減少。すっかり成人の日に移行した感じです。(哲




20100105句(前日までの二句を含む)

January 0512010

 セーターに猫の毛付けしまま帰す

                           西澤みず季

謡にある通り、猫は寒がりであるから、冬ともなれば人間の膝の上だろうが、うっかり脱ぎ捨てた洋服の中だろうがお構いなしに、より暖かい場所を探し求める。というわけで猫を飼っていると、どんなに注意していてもどこかしらに猫の毛が付いているものである。電車のなかで居眠りした友人がはっと目をさましたとき「隣の人がなにしてたと思う?」と言う。愛らしい女性がもたれかかってきたのだから喜んでいたのかと思いきや、「すごく嫌そうに、わたしのコートから移動した猫の毛を一本一本取ってたの」だそうだ。猫の毛は細くてなかなか取りにくい。だからこそ、家庭内に不穏な騒動を持ち込む原因にもなりかねない。掲句の女心がちょっぴりのいたずらなのか、はたまた浮気な男へのきつい一撃なのか、どちらにしてもその後が気になる一句である。猫を飼っている人としか付き合わないから大丈夫、などとゆめゆめ油断めされるな。かの友人は「うちの猫の毛じゃない」ということもすぐに分かると言っていた。〈雪渓を見上ぐる鳥の顔をして〉〈極月の万の携帯万の飢餓〉『ミステリーツアー』(2009)所収。(土肥あき子)




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