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20091231句(前日までの二句を含む)

December 31122009

 人類に空爆のある雑煮かな

                           関 悦史

ーザン・ソンタグの「他者の苦痛へのまなざし」(みすず書房)に次のような記述がある。「戦争や殺人の政治学にとりまかれている人々に同情するかわりに、彼らの苦しみが存在するその同じ地図の上にわれわれの特権が存在し、或る人々の富が他の人々の貧困を意味しているように、われわれの特権が彼らの苦しみに連関しているのかもしれない一われわれが想像したくないような仕方で―という洞察こそが課題であり、心をかき乱す苦痛の映像はそのための導火線にすぎない。」人類はどこに向かおうとしているのか。テレビの空爆の映像を雑煮を食べながら見ている私たちの日常。距離的にも実感も遠いその感覚を俳句で表現するのは難しいが、年神に供えるめでたい雑煮が空爆と並べられることでうっそりとした不安の影をつくる。間尺に合わない言葉に触発されて今まで意識もしなかった「雑煮」の字面に荒んだ風景が滲む。パレスチナ、ガザ地区への空爆で始まり、政権交代、デフレ、貧困、に揺れた2009年も今夜で終わり、明日からは新しい年がはじまる。「新撰21」(2009)所載。(三宅やよい)




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