先日天王洲で珈琲を飲んだら700円。インスタントのほうが余程美味。(哲




20091202句(前日までの二句を含む)

December 02122009

 東海道松の並木に懸大根

                           吉屋信子

海道の松並木と懸大根の取り合わせがみごとである。しかもワイドスクリーンになっている。「懸大根」とは「大根干す」の傍題であり、たくあん漬にするための大根を、並木に渡した竹竿か何かにずらりと干している図である。東海道のどこかで目にした、おそらく実景だろうと思われる。たくさん干されている大根の彼方には、冠雪の富士山がくっきり見えているのかもしれない。私は十年ほど前、別の土地でそれに似た光景に出くわしたことがある。弘前から龍飛岬へ行く途中、津軽線の蓬田あたりの車窓からの眺めだったと思う。海岸沿いに白い烏賊ならぬ真っ白い懸大根が、ずらりと視界をさえぎっていた。場所柄、魚を干しているならばともかく、海岸と大根の取り合わせに場違いで奇妙な印象をもった。もちろん、漁村でたくあん漬を作っても何の不思議もないわけだが……。さて、東海道の松並木というと、私などは清水次郎長一家がそろって、旅支度で松の並木を急ぐという、映画のカッコいいワンシーンを思い出してしまう。信子の大根への着眼には畏れ入りました。立派な東海道の絵というよりも、土地に対する親近感というか濃い生活感を読みとることができる。信子の冬の句に「寒紅や二夫にまみえて子をなさず」「寒釣や世に背きたる背を向けて」などがある。『文人俳句歳時記』(1969)所収。(八木忠栄)




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