農家の冬用意。有楽町駅近くの「ごはんミュージアム」にて撮影。(哲




20091201句(前日までの二句を含む)

December 01122009

 やくそくの数だけ落ちる冬の星

                           塩野谷仁

空が漆黒に深まり、月や星に輝きを増してくると、冬も本番である。先月のしし座流星群は、月明かりの影響がない最高の条件で見ることができたという。天体観測に特別な興味がなくても、今夜、どこかでたくさんの星が流れているのだろうと思うのは、なんとなく気持ちを波立たせる。それは、願いごとを三回繰り返せば叶うおまじないや、マッチ売りの少女の「星が落ちるたびに誰かが神さまに召される」という場面を思い出させ、流れ星に対して誰もがどこかで持っている感情に触れることで、掲句の「約束」が響いてくる。約束とは誰かと誰かの間の個人的な決めごとから、運命やさだめというめぐりあわせまでも含む言葉だ。平仮名で書かれた「やくそく」には、ゆっくり噛んで含める優しさと、反面どうにもあらがえないかたくなさを併せ持つ。それは、流れ星が持つ美しいだけではない予兆を引き連れ、心に染み込んでいく。鋭すぎる冬の星が、ことのほか切なく感じられる夜である。〈一人遊びの男あつまる冬の家〉〈着膨れて水の地球を脱けられず〉『全景』(2009)所収。(土肥あき子)




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