武蔵野市では有名な原っぱ公園。原っぱにしては整備され過ぎているけれど。(哲




20091108句(前日までの二句を含む)

November 08112009

 更くる夜や炭もて炭をくだく音

                           大島蓼太

太(りょうた)は江戸中期の俳人です。今では、この句のように炭を手にすることはめったにありませんが、江戸期にもどらずとも、わたしが子供の頃にはまだまだ暖房の主役でした。炭団(たどん)の丸さをてのひらに感じたり、練炭の蓮根のような形状を見つめていたり、もう日常では目にしなくなっただけに、懐かしさがつのります。この句の炭は、棒状の木炭のようです。昨今は暖房だけではなく、浄化作用やら脱臭作用やらで、さまざまな用途にも使われていますが、やはりもとは、人をあたためるためにあったもの。使い道はあくまでもわかりやすく、わたしたちの生活にはなくてはならないものでした。また、この句を読んでいてはっと思ったのが、「炭もて炭をくだく」のところ。なるほどそのものを道具にしてそのものを割る、ということがあるのだなと、妙に感心してしまいます。炭と炭があたったときの甲高い音。どうってことのないことなのに、なぜかひどくひきつけられます。自身をくだき、くだかれる音から、しばらくは心がはなれられません。『日本名句集成』(1992・學燈社)所載。(松下育男)




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