「小学六年生」など休刊。昔は親が買い与えた。今は親も買わない中身。(哲




20091028句(前日までの二句を含む)

October 28102009

 月の出を待つえりもとをかき合せ

                           森田たま

の出を待つなどという風情も時間も、現実にはほとんど失われてしまったのかもしれない。いや、それでも俳人のあいだでは、月の出を待って競作しようとか、酒を楽しもうという情趣が残されているのかもしれない。えりもとをかき合わせる仕草も、舞台や高座ではしっかり生きている。今月初めにたまたま北欧のある町を歩いていて、街路から遠くにぽっかり浮かんでいる満月に気がついてビックリ。何の不思議もないわけだが、妙にうれしく感じられる月だった。思わずカメラを向けたのだが、他にその月に気づいている人はいないようだった。掲出句の御仁は、どんな状況で月の出を待っているのだろうか。えりもとを思わずかき合わせたのは、おそらくちょいとした緊張と寒さのせいだったものと思われる。それがどんな状況であれ、いかにもシックな女性らしい仕草ではないか。ふと気づいた月の出ではなく、月の出を今か今かと待っているのであり、出を待たれている月があるという、かすかで濃い時間がそこに刻まれている。えりもとをかき合わせるという仕草によって、さりげないお色気もここには漂っている。たまは多くの俳句を残しているが、月を詠んだ句に「はろばろと空の広さよ今日の月」がある。『文人俳句歳時記』(1969)所収。(八木忠栄)




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