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20091025句(前日までの二句を含む)

October 25102009

 一つぶの葡萄の甘さ死の重さ

                           稲垣 長

週に続いて葡萄の句です。先週の葡萄は手のひらに乗せられていましたが、今週の葡萄は、薄い皮をめくられ、静かに口の中に入れられています。思えば時代と共に、葡萄にも改良が重ねられてきたようで、わたしが子供の頃に食べたものは、粒も小さく、中には大きな種が入っていて、種の周りはひどくすっぱかった記憶があります。だから梨とか桃のように、全体がまるごと甘い果物ほどには、ひかれることはありませんでした。しかし今では、粒も見事に大きく、種もなく、どうだといわんばかりの見事な果物になりました。ここに描かれている「一つぶ」も、現代の見事な姿の葡萄なのでしょう。人として生れ出て、なすべきことはたくさんありますが、日々、ひたすらに食べ続けることが、比喩でもなんでもなく、そのまま生きていることの証になっています。だからなのでしょうか。球形の見事な形と、とても甘い味をした、命の美しさそのもののような葡萄を、生死の秤の片方に置いてみたくなる感覚は、よくわかります『朝日俳壇』(朝日新聞・2009年10月19日付)所載。(松下育男)




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