September 22 2009
犬の仔の直ぐにおとなや草の花
広渡敬雄
気に入りのひとコマ漫画に、愛犬の写真を毎年撮ってずらりと飾ってある居間を描いたものがある。一枚目の子犬の他はどれも全部、全く同じ表情の成犬が愛想なく並んでいて、見ている方をクスリと笑わせる。子犬や子猫の時代の可愛らしさは、飼い主の記憶のなかでは、そのいたずらな行為とともに永遠に記憶に刻まれるが、実際の時間としてはまたたく間に過ぎてしまう。拾ってきた当初、ティッシュボックスのなかで眠れるほどの大きさだったわが家の三毛猫も、一歳を迎える前に一夜にして大人びた顔の恋猫になった。そこには、本人(猫だが)も当惑しているような居心地の悪さも見えはしたが、誰に教わることなく、恋猫特有の鳴き声を朗々と披露したのだった。しかして動物たちの成長の勢いは、思春期を思い悩むこともなく、さっさと大人になり、さっさと飼い主の年齢を追い抜いていく。掲句の切れ字「や」により引き出されるわずかな詠嘆が、この愛らしい生きものが人間よりずっと短い寿命を持つことを言外に匂わせている。『ライカ』(2009)所収。(土肥あき子)
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