September 16 2009
生きてあることのうれしき新酒哉
吉井 勇
新米で作られた酒は新酒と呼ばれ、「今年酒」とも「新走(あらばしり)」とも呼ばれる。初ものや新しいものが好きなのは人の常。酒好きの御仁にとって新酒はとりわけたまらない。酒造元の軒先に、昔も今も新酒ができた合図に吊るされる青々とした真新しい杉玉(酒林)は、うれしくも廃れてほしくない風習である。暑さ寒さにかかわりなく年中酒杯を口に運んでいる者にとって、香りの高い新酒はまた格別の逸品である。そのうまさはまさに「生きてあることのうれし」さを、改めて実感させてくれることだろうし、今年もまた新酒を口にできることの感激を味わうことにもなる。勇が掲出句を詠んだ時代は、現在のようにやたらに酒が手に入る時代とはちがっていたはずである。それだけに新酒のうれしさは一入だったにちがいない。逆に現在は、新酒との出会いの感激はそれほどでもなくなったかもしれない。勇は短歌のほかに俳句もたくさん詠んだ。酒を愛した人らしい句に「 またしても尻長酒や雪の客 」もある。中村草田男の新酒の句に「 肘張りて新酒をかばふかに飲むよ 」があって、その様子は目に見えるようだ。10月1日は「日本酒の日」。『文人俳句歳時記』(1969)所収。(八木忠栄)
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