August 09 2009
放課後の暗さ台風来つつあり
森田 峠
作者は学校の先生でしょうか。教室の見回りに歩いているのかもしれません。あるいは何か、授業をした時の忘れものを取りにもどったのでしょう。「放課後」「暗さ」「台風」の3語が、みごとにつりあって、ひとつの世界を作り出しています。湿度の多い暗闇が、句を満遍なく満たしています。教室の引き戸を開けて中に入り、外を見れば、窓のすぐ近くにまで木が鬱蒼と茂っています。その向こうの空には、濃い色の雲が性急に動いているようです。この句に惹かれるのは、おそらく読者一人一人が、昔の学生時代を思い出すからなのです。昼間の、明るい教室に飛び交っていた友人たちの声や、輝かしいまなざしが、ふっと消えたあとの暗闇。一日の終わりとしての暗闇でもあり、学校を卒業したあとの日々をも示す、暗闇でもあるようです。句はひたすらに、事象をあるがままに描きだします。学生が去ったあとを訪れようとしている遠い台風までにも、やさしく懐かしい思いが寄り添います。『合本 俳句歳時記第三版』(2004・角川書店)所載。(松下育男)
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