恒例夏番組の収録でTOKYO-FMへ。古巣への里帰りみたいなものです。(哲




20090805句(前日までの二句を含む)

August 0582009

 たつぷりとたゆたふ蚊帳の中たるみ

                           瀧井孝作

や蚊帳は懐かしい風物詩となってしまった。蚊が減ったとはいえ、いないわけではないが、蚊帳を吊るほど悩まされることはなくなった。蚊取線香やアースノーマットなるもので事足りる。よく「蚊の鳴くような声」と言うけれど、蚊の鳴く声ほど嫌なものはない。パチリと叩きつぶすと掌にべっとり血を残すものもいる。部屋の隅っこから何カ所か紐で吊るすと、蚊帳が大きいほどどうしても中ほどにたるみができる。蚊帳の裾を念入りに払って蒲団に入り、見あげるともなくたるみを気にしているうちに、いつか寝入ってしまったものである。小学生の頃には、切れた電球のなかみを抜き、その夜とった蛍を何匹も入れ、封をして蚊帳のたるみの上にころがして、明滅する蛍の灯をしばし楽しんだこともあった。「たつぷりとたゆたふ」という表現に、そこの住人の鷹揚とした性格までがダブって感じられるではないか。昔の蚊帳は厚手だった。代表作「無限抱擁」のこの作家は、柴折という俳号をもち自由律俳句もつくる俳人としても活躍した。『柴折句集』『浮寝鳥』などの句集があり、全句集もある。蚊帳と言えば、草田男に「蚊帳へくる故郷の町の薄あかり」がある。『滝井孝作全句集』(1974)所収。(八木忠栄)




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