「心に太陽を持て」とは山本有三訳詩の一節。が、それにはまず本物の太陽を。(哲




20090804句(前日までの二句を含む)

August 0482009

 蟻を見るみるみる小さくなる大人

                           小枝恵美子

人がしゃがめば子どもの目線になる。それだけで、ぐっと地面が近づいて見えるものだ。蟻を見つめ続けるうちに、みるみる身体が小さくなっていくような掲句は、まるでSF映画のようだが、見方を変えれば、蟻がどんどん大きく見えてくるということでもある。最初、黒い粒の行列にしか見えない姿が、凝視しているうちに、一匹ずつの顎の先に挟んでいるものまではっきりしてくるのだから、だんだんどちらが大きいかなどということがすっかり頭から消えてしまう。画家の熊谷守一は、自宅の庭で熱心に蟻を観察し「地面に頬杖つきながら、蟻の歩き方を幾年もみていてわかったんですが、蟻は左の二番目の足から歩き出すんです」と書く。東京都豊島区にある美術館となっている旧宅の壁には巨大な蟻が描かれている。彼こそ「みるみる小さくなる大人」だったに違いない。『ベイサイド』(2009)所収。(土肥あき子)




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