June 20 2009
アロハ着て竜虎の軸を売り余す
木村蕪城
アロハシャツといえば、以前は原色で派手で映画でヤクザが着ている、というイメージだった。この句はヤクザというより香具師か。くわえ煙草で、売れ残ったなんとなくあやしい軸を前に、ちっ、とか言ってそうだ。売れ残る、ではなく、売り余す、という表現が、暑かった日中と、夕焼けのやりきれない赤を思わせる。歳時記の解説によると、アロハシャツは終戦後夏服として爆発的に流行したという。最近は、ハワイの正装、といったイメージの方が強いかもしれないが、夏服として渋い色合いのアロハシャツをうまく着こなしている人も見かける。今年八十四歳の父は、今でも週二回仕事で外出するが、通勤時は一年を通じて白い長袖ワイシャツ、ちょっと出かける時はゴルフのポロシャツ、家にいる時はパジャマ、の生活が続いていた。それが数年前、ハワイに旅行した際、「似合うんじゃない」の孫の一言で、アロハシャツを一枚購入。ブルーが基調の渋めの柄である。長身で色黒の父がそれを着ると、どこから見ても日系二世、ハワイの街にとけこんでいたが、今では夏の一張羅、着心地がよいのだそうだ。明日の父の日、近所の天麩羅屋にアロハを着て出かけることになるかもしれない。『新日本大歳時記 夏』(2000・講談社)所載。(今井肖子)
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