June 05 2009
香水や腋も隠さぬをんなの世
石川桂郎
脚本家の馬場當さんが言った。「今井君えらい世の中になったよ」近所の夫婦の夫婦喧嘩の仲裁をしたときのことらしい。妻の浮気を疑っている夫を妻は鼻でせせら笑った。「まったくうるさいわねえ。浮気してたらどうだって言うのよ。減るもんじゃあるまいし」君ねえ、女の方が「減るもんじゃあるまいし」って言うんだ。世の中も変わったねえ。馬場さんが感慨ぶかげに言ったのが5年前。この前会ったときも女性論議。「今、女が運転しながら咥え煙草は当たり前だもんな。今井君もう少し経つと女が立小便するようになるよ」立小便はともかくも男女関係のどろどろの修羅場を得意とする馬場さんらしい慨嘆だとは思った。まあ、男はとかく女に自分の理想を押し付けたがる。そこの虚実にドラマも生まれる。腋を隠さぬくらいで男が驚いたのは昭和29年の作。ここから確かに虚実の実の方の範囲は拡大した。「らしさ」という虚の方もまた時代に沿って姿を変えている。「減るもんじゃなし」を桂郎さんに聞かせたらたまげるだろうな。『現代俳句大系第十一巻』(1972)所収。(今井 聖)
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