ハモニカを買いたくなったけれど、なかなか売っている店が見つかりません。(哲




20090412句(前日までの二句を含む)

April 1242009

 ふらここを降り正夢を見失う

                           塩野谷仁

語は「ふらここ」、春です。要はブランコのことですが、俳句を読んでいると、日常では決して使わない、俳句だけの世界で生きている語彙に出くわします。たとえば蛍のことを、「ほうたる」とも言うようですが、はじめてそれを見たときには、なんとも不可思議な感覚を持ちました。「ふらここ」という語も、意味がわかった後も、どうしても別のものを連想してしまいます。平安時代から使われていた和語だと言われても、いったんそうなってしまうと、なかなかそのものが頭から離れてくれないのです。それはともかく、今日の句です。一番目立っているのは「正夢」の一語でしょうか。言うまでもなく、将来現実になる夢のことです。これだけで、句全体を覆うだけの抒情が生み出されています。ところが作者は、それをもう一ひねりして、「正夢を見失う」としています。それによって読者は、想像をたくましくせざるを得なくなります。ブランコに乗っている間は、しっかりと胸に抱えていた正夢が、地上に降りた途端に失われてしまう。まるで現実と夢の境に綱をたらして、ひとしきり揺れてきたかのようです。「俳句」(2009年4月号)所載。(松下育男)




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