April 092009
仔馬跳ね宇宙に満つる微光かな
石母田星人
何の映画か忘れたが雷鳴の夜に誕生した仔馬が生れて間もなく立ち上がろうとするシーンがあった。そんな健気な仔馬も母馬について初めて戸外に出たときにはなかなか親馬のそばを離れないが、いったん走るコツを覚えると喜々として駆け始める。初めて受ける風も光る青葉も仔馬にはあふれんばかりにまばゆい世界に思えよう。まだ走る動作に慣れない仔馬がぎくしゃく脚を蹴りあげるたび命の躍動が微光となって暗黒の宇宙に満ちてゆく。今ここにある生命の全てはどこかで宇宙の営みと繋がっているのかもしれない。星人と名乗る作者にとって「地球に乗る」ことは季感のみなもとを見つめることであり、それは太陽系、銀河系を感じることである。とあとがきにある。その通り句集には自分の存在と宇宙の関係を大きな流れで捉える句が多く収録されており、小さくまとまりがちな季の捉え方に新しい方向性を指し示しているように思える。「掌に包みたる宙木の芽晴」「脊髄をはしる曙光や山桜」『膝蓋腱反射』(2009)所収。(三宅やよい)
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