森毅が料理中に大やけど。老人はイメージ通りに身体が動かない。他山の石。(哲




20090301句(前日までの二句を含む)

March 0132009

 鳥の巣より高き人の巣留守勝ちに

                           金子兜太

語は「鳥の巣」、春です。命が産み出される場所が、そのまま季節に結びついているようです。作者は、散歩で通りすがった雑木林の中から、春の空を見上げてでもいるのでしょうか。数メートル先の空には、小さな鳥の巣が見えています。そしてその先に視線を伸ばせば、遠くには高層マンションが見えています。鳥の巣と、高層マンション。大きさも堅さも中に住むものも、全く違っているものを、同じものとして見据えたところに、この句のすぐれた視点があります。「人の巣」という言い方は、一見、それほど際立った表現とは思えません。それでも、こうして句の中に置かれてみると、思った以上に新鮮で、目を見開かせるものを持っています。どうしたらこんなふうに、効果的な言い回しが出来るのだろう。あるいは人とは違う見方というものは、どこまでが表現の中で許されてあるのだろう。そんなことをこの句は、考えさせてくれます。句は最後に、人の巣が「留守勝ち」であると、言っています。あんなに高いところに、人のいない空間がぽつんと置き去りにされている。確かに、鳥の巣よりもずっと深い寂しさが、こちらに押し寄せてきます。「俳句」(2009年2月号)所載。(松下育男)




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