February 13 2009
着ぶくれ出勤の群集 の中で 岬のこと
澤 好摩
伊丹三樹彦さん提唱の「分かち書き」は一行表記の中の切れを作者の側から設定すること。そんなアキを作らずとも、切れ字が用いられている場合はもちろんのこと、意味の上で考えれば切れの箇所は明らかという考え方もあろうが、それは旧文法使用の場合。ときに定型音律を逸脱する現代語使用を標榜する運動を思えば分かち書きという方法も理解できる。しかし、現代語においても切れが明らかな箇所に一字アキを用いれば分かち書きの必然性が薄れる。空けなくたって切れるのは一目瞭然ということになる。この句のように「群集」から「の」につづくまでに一拍置けと指示されると、群集の渦の中に身をまかせて入った作者が「自分」に気づくまでの間合いがよくわかる。分かち書きの効果が発揮されていて作者から読者への要請が無理なく嫌味なく伝わるのである。個の在り方がナマの思念のまま出ている作品である。『澤好摩句集』(2009)所収。(今井 聖)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|