January 172009
冬満月枯野の色をして上がる
菊田一平
先週の金曜日、東京に初雪という予報。結局少しみぞれが落ちただけだった。少しの雪でも東京はあれこれ混乱する。一日外出していたのでほっとしたような、やや残念で物足りないような気分のまま夜に。すっかり雨もあがった空に、十四日の月がくっきりとあり、雫のようなその月を見ながら、掲出句を思い出していた。枯野は荒漠としているけれど、日が当たると、突き抜けたようなからりとした明るさを持つ。凩に洗われた凍て月のしんとした光には、枯野本来のイメージも重ね合わせることができるが、どちらかといえばぱっと目に入る明るさが脳裏に浮かんだのではないか、それも瞬時に。〈城山に城がぽつんと雪の果〉〈煉瓦より寒き首出し煉瓦積む〉など、目の前にあるさまざまな景色を、ぐっとつかんで詠むこの作者なら、枯野の色、という表現にも、凝った理屈は無いに違いない、と思いつつ、細りゆく月を見上げた一週間だった。『百物語』(2007)所収。(今井肖子)
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