二日続けて深夜にマンション警報装置が誤作動。おかげで眠くて仕様がない。(哲




20081219句(前日までの二句を含む)

December 19122008

 卵落した妻睨れば妻われを視る

                           野宮猛夫

には「み」のルビあり。貧しさの中で、とげとげしくなる夫と妻。卵を落した妻をとがめる視線を夫が送れば、妻はあんたこそなによと夫を鋭く見返す。「オイ、もったいないじゃないか」「そんなこと、あんた、わたしに言えるの?」無言のうちに交わされる二種類の視線、「みる」が夫婦の関係、生活を浮き彫りにする。卵の貴重さも時代を映す。貧しさがテーマの句は「社会性俳句」の時代にはデモやストの句と並んでひとつの典型だった。しかし、それらの多くは貧しい庶民の「正しさ」「美しさ」を強調したため、政治宣伝のポスターのような図柄になった。ヘルメットを被りハンマーをもった青年が「団結」と叫んでいるようなどこかの国のポスターと同じである。「社会性俳句」は個別の内面に入ることを為し得なかったために「流行」に終わる。人間の、自己の心理を自己否定のようにえぐりだすこんな句は俳句の可能性を確実に拡げている。こんな切迫した瞬間の感覚に季節感の入り込む余地はない。『地吹雪』(1959)所収。(今井 聖)




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