人間は着込むが、木々は脱ぎ捨てる。いずれも生きるための知恵ではあるが。(哲




20081206句(前日までの二句を含む)

December 06122008

 原人の顔並びをり夕焚火

                           小島 健

い時、温かいものはありがたい。たとえばお風呂、湯船に首までつかると心身共にくつろぐ。でも、お風呂が心地よいのは温かいからだけではない、浮力が大きい要素なのだと思う。体が軽く感じられることが、心地よさを増している。そして焚火。街中ではもうできないが、ともかく焚火をしていると自然に人が集まってきたものだ。もちろん温かいからなのだが、これもそれだけではない。炎には人を惹きつける何かがあるからだろう。ものが燃えるさまには、つい見入ってしまう。焚火を囲んで、不規則にゆらめく炎に照らされた顔は、みなじっとその炎を見つめている。まったく違った顔でありながら、炎を見つめるどこか憑かれたような表情には、初めて火を自ら作り出した原始の血の片鱗が、等しく見えているのだろう。そして変わらず地球は回り続けて、短い冬の夕暮が終わる。『蛍光』(2008)所収。(今井肖子)




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