俵萌子、沼正三。若き日に新宿の酒場で知遇を得たお二人が亡くなられた。(哲




20081205句(前日までの二句を含む)

December 05122008

 雪嶺の古びゆくなり椀のふち

                           八田木枯

の山脈の峰々を木の椀の縁に並べてみている。この椀はなんとか塗りの逸品などではなく、日常、飯など盛って使い古した椀だ。椀とともに人間の営みがあり、人生が展開し、それを外側から大きく包みこんで雪嶺がある。雪嶺が山ばかりの国、日本の象徴だとすれば、椀は貧しい戦後の日本人の生活の象徴。「私」の老いもそこに重ねて刻印される。ひとつの椀とともに日本も私も古びてゆくのだ。作者は山口誓子門。誓子の言う「感性と知性の融合」をまた自己の信条とする。「雪嶺」は概念や象徴としての雪嶺。そのときその瞬間の個別の雪嶺とは趣きを違える。感性と知性のバランスに於いては、師よりも知性重視の傾向が見える。そこが個性。『あらくれし日月の鈔』(1995)所収。(今井 聖)




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