November 152008
鷹去りていよいよ鴨の小春かな
坊城俊樹
日本伝統俳句協会が作っているカレンダーがあるのだが、我が家ではこれをトイレにかけている。協会員の入選句やインターネット句会の方の作品の他、虚子他の色紙や短冊がカラー印刷されているのをトイレに、というのも気が引けるが、毎日つぶさにゆっくり読めるので私には最適なのだ。掲出句は、十一月のページに載っていて、十月分をぺりっと破いた瞬間、短冊の文字が目に飛び込んできた。小春か、いい言葉だな、と思ってあらためて読むと、鷹、鴨、と合わせて季題が三つ。いずれも弱い季題ではないのにもかかわらず、うまく助け合って、きらきらとした小春の句となっている。景は鴨の池だろう、もしこれが、鴨に焦点を当てて、鷹去りていよいよ鴨の日和かな、などとしてしまうと、鷹と鴨が対立しておもしろみがなくなってしまう。あえて、小春かな、と、大きくつかんだことで、三つの季題が助け合い、まことに小春という一句になった。なるほど、と毎日拝見している。(今井肖子)
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