♪地球の上に朝が来る その裏側は夜だろう(川田晴久)。かくてまた月曜日。(哲




20081027句(前日までの二句を含む)

October 27102008

 紐解かれ枯野の犬になりたくなし

                           榮 猿丸

んだ途端にアッと思った。この句は今年度角川俳句賞の候補になった「とほくなる」五十句中の一句。選評で正木ゆう子も言っているように、山口誓子に「土堤を外れ枯野の犬となりゆけり」がある。揚句がこの句を踏まえているのかどうかは知らないが、私がアッと思ったのは、人間はもとより、犬のありようもまた誓子のころとは劇的に変わっていることを、この句が教えてくれたからである。そう言われれば、そうなのだ。昔の犬は紐を解かれれば、喜んで遠くに駈け出していってしまったものだ。だがいまどきの犬は、人間に保護されることに慣れてしまっていて、誓子の犬のようには自由を喜ばず、むしろ自由を不安に感じるようだと、作者は言っている。犬に聞いてみたわけではないけれど、作者にはそんなふうに思われるということだ。それだけの句と言えばそれまでだが、しかし私には同時に、作者の俳句一般に対する大いなる皮肉も感じられる。つまり、俳句の犬はいつまでも誓子の犬のように詠まれており、実態とは大きくかけ離れていることに気がついていない。むろんこのことは犬に限らず、肝心の人間についても同様だと、作者は悲観しつつもちょっと犬を借りてきて批判しているのだと思う。たとえ作者に明確な批判の意識はないのだとしても、この句はそういうところにつながっていく。今後とも、この作者には注目していきたい。「俳句」(2008年11月号)所載。(清水哲男)




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