九月もおしまいですね。しかし九月にしては寒すぎます。コートが必要かな。(哲




20080930句(前日までの二句を含む)

September 3092008

 人間は水のかたまり曼珠沙華

                           松尾隆信

体の化学成分比率は水分が60%、組織が40%であるという。新生児には80%だったという水分量を聞くと、大人になったことで失ってしまったさまざまな潤いが数字に表れているようにも思う。それでもやはり、人間の半分以上は水なのだ。考えたり、悩んだり、いらついたり、右往左往する水のかたまりを、作者はわずかに苦笑しつつ、愛おしく感じているのだと思う。そして曼珠沙華も人臭い花である。法華経に「摩訶曼珠沙華」として登場し、サンスクリット語で 「マカ」は「大きい」、「マンジュシャカ」は「赤い」を意味するありがたい花のはずなのだが、有毒であったり、鮮紅色が災いしたりで「死人花」「捨て子花」「幽霊花」など因果を強く感じさせる別名を持つ。さらに枝葉を許さぬ花の形が、だんだん人間の姿となって、かたまり咲く曼珠沙華が冠を載せた人の群れのように見えてくる。〈渚より先へは行けず赤とんぼ〉〈鯛焼の五匹と街を行きにけり〉『松の花』(2008)所収。(土肥あき子)




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