昨日は吉祥寺、今日は三鷹の秋まつりへ。帰りに名月は見られますか。(哲




20080914句(前日までの二句を含む)

September 1492008

 うらがえすやもう一つある秋刀魚の眼

                           五十嵐研三

い先日も、夕食のテーブルの上に、ちょこんと載っていました。勤めから帰って、思わず「サンマか」と、口から出てきました。特段珍しいものではありませんが、箸をつけて口に入れた途端、そのおいしさに素直に驚いてしまいました。掲句、「うらがえすや」とあるのですから、片面を食べ終わって箸で裏返したところを詠っています。眼がもう一つあると、わざわざ言っているからといって、秋刀魚の眼を意識しながら食べていたわけでもないのでしょう。それほどに威圧的に見つめられているわけでもなく、眼のある位置に眼があるのだと、あたりまえの感慨であったのかと思います。とはいうものの、秋刀魚を食べている時に、眼がもう片方にもあるのだとは、通常は考えないのですから、ここに文芸作品としての発見があるのは言うまでもありません。ただ、そんなことはことさらに書くことでもないのです。その、ことさらでないところが、秋刀魚という魚のもっている特長とちょうどよくつりあっており、この句は、日々の生活に添うように、不思議な安心感を与えてくれるのです。『合本俳句歳時記 第三版』(2004・角川書店)所載。(松下育男)




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