昨夕も雷鳴が轟いたと思ったら、猛烈な雨が。とにもかくにも八月尽。(哲




20080831句(前日までの二句を含む)

August 3182008

 擲てば瓦もかなし秋のこゑ

                           大島蓼太

ういう状況で、瓦を擲(なげう)つなどということがあるのでしょうか。今でこそ瓦を手に取る機会などめったにありませんが、作者は江戸期の俳人ですから、道端に、欠けた瓦がいくらでも落ちていたのでしょう。何かしらのうっぷんでも溜まっていたものと見えます。せめてからだをはげしく動かすことで、少しでも吐き出したい感情があったのです。でも、怒りにまかせて物を投げつけても、心がすっきりするわけではありません。瓦があたって響く音が、むしろ悲しみを増してしまったようです。硬くて軽い瓦は、ぶつかることによって、秋の空に高く悲しい音をたてています。石でも、木切れでもなく、瓦を詠みこんだことで、音の質が限定され、秋の空気とひとりでに結びついてきます。と、ここまで書いてきてふと思ったのですが、ここで投げているのは瓦ではなく、小石で、その小石が建物の屋根の上の瓦にあたって、秋の音を立てているのではないでしょうか。そのほうが句の視線が上のほうへ向かって、音も、よりすっきりと聞こえてきそうです。『角川俳句大歳時記 秋』(2006・角川書店)所載。(松下育男)




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