阪神はもう勝ったり負けたりしてればよい。この余裕がまた強さのもとに。(哲




20080726句(前日までの二句を含む)

July 2672008

 みちのくの蛍見し夜の深眠り

                           大木さつき

月も終わりに近づき、蛍の季節には少し遅いかもしれないけれど。子供の頃に住んでいた官舎の前の小さな川は、今思えばそれほど清流であったとも思えないのだが、毎夏当然のように蛍が飛んでいた。仕事帰りのほろ酔いの父が、橋の上で捕まえてきた蛍の、ほの白い光が指の隙間から洩れるのを、じっと見ていた記憶がある。ゆっくり点滅していたのであれは源氏蛍だったのか、この作者がみちのくの旅で出会った蛍は、星がまたたくように光る平家蛍かもしれない。昼間は青田風の渡る水田に、頃合いを見計らって蛍を見に。蛍の闇につつまれて小一時間も過ごして宿に戻り、どっと疲れて眠ってしまう。蛍そのものを詠んでいるわけではないけれど、深眠り、という言葉の奥に、果てしなく明滅する蛍が見えて来て、読むものそれぞれの遠い夏を、夢のように思い出させる。〈啄木のふるさと過ぎぬ花煙草〉という句もあり、このみちのくは岩手なのかとも。『一握の砂』に〈蛍狩り川にゆかむといふ我を山路にさそふ人にてありき〉という歌があるといい、これもまた、蛍にまつわる淡い思い出。『遙かな日々』(2007)所収。(今井肖子)




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