プリントゴッコが今月いっぱいで販売終了。ずいぶんとお世話になった。(哲




20080601句(前日までの二句を含む)

June 0162008

 噴水に真水のひかり海の町

                           大串 章

つの視点を、この句から感じることができます。まずは首を持ち上げて、「見上げる」視点です。空へ向かって幾度も持ち上げられて行く噴水を、下から見上げています。おそらく公園の一角でしょう。歩いていたら突然目の前に水が現れる、ということ自体がわたしたちにはうれしい驚きです。それまでの時間がしっとりと湿ってくるような感じがするものです。その水を明るい空へ放り投げてしまおうと、初めて考えたのはいったい誰だったのでしょうか。もう一つの視点は、上空から町と、その向うに広がる海を「見下ろす」ものです。晴れ上がって、どこまでもすがすがしい空気に満ちた、清潔な町並みと、静かに打ち寄せる波が見えてきます。言うまでもなくこの句の魅力は、噴水が真水であることの発見にあります。そんなことは当たり前じゃないかという思いは、その後に海と対比されることによって、気持ちのよい納得に導かれるのです。理屈はどうあれ、透き通った二つの視点を与えられただけで、わたしは句に接するうれしさでいっぱいになるのです。『角川俳句大歳時記 夏』(2006・角川書店)所載。(松下育男)




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