なんだか梅雨っぽいなあ。ちなみに昨年の関東甲信越の梅雨入りは6月14日。(哲




20080531句(前日までの二句を含む)

May 3152008

 叩きたる蠅の前世思ひけり

                           小松月尚

といえば、むしむしし始めた台所にどこからともなく現れて、そこにたかるんじゃない、というところにちゃっかり止まるので、子供の頃は、できた料理にたかりそうになる蠅を追い払うのもお手伝いのひとつだった。強い西日をうけてさらにぎとぎと光る蠅取り紙も、蚊取り線香の匂いや、色よく漬かった茄子のおしんこのつまみ食いなどとともに、夏の夕暮れ時の台所の思い出である。そんな蠅だが、最近はめっきり見かけなくなった。先日玄関先で久しぶりに遭遇、あらお久しぶりという気分だったが、昔は、とにかくバイ菌のかたまりだ、とばかり思いきり叩いた。同じように叩いてしまってから、ふとその前世を思っている作者である、真宗大谷派の僧であったと知ればうなずけるのだけれど。蠅の前世、という表現は少し滑稽味を帯びながら、作者の愛情深い視線と、飄々とした人柄を感じさせる。句集の虚子の前書きの中には「総てを抛(な)げ出してしまつて阿彌陀さまと二人でゐる此のお坊さんが好きであります。」という一文があり、その人となりを思う。『涅槃』(1951)所収。(今井肖子)




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