やっと交流戦の初戦が取れたタイガース。今日勝てば上昇気流に乗れるぞ(哲




20080526句(前日までの二句を含む)

May 2652008

 中肉にして中背の暑さかな

                           加藤静夫

の句、どことなくおかしい。「おかしい」と言うのは、変であり滑稽でもあるという意味だ。すらりと読み下ろせば、この「中肉にして中背の」形容は「暑さ」に掛かることになる。つまり、暑さを擬人化していると読める。しかしいくら擬人化しているとはいえ、中肉中背の暑さとは不可解だ。どんな暑さなのか。強いて言えば季節に頃合いの暑さと受け取れなくもないけれど、その暑さの程度はわかったようでわからない。でも読者は馬鹿じゃないから、ここで瞬時に読みの方角を転換して、中肉中背とはすなわち作者のことであり、その作者が感じている暑さのことだと頭を切り替える。が、そう読んでしまうと、さあっとシラける。せいぜいが肥満体にして長身の人の暑がっている姿などを想像し、それに比べれば楽そうだなどと思うだけで、句全体はさして面白くなくなるからだ。そこでまた馬鹿じゃない読者は最初の読みに戻り、いや待てよとばかりに次の読みに行き、そうこうしているうちに、この読み方の揺れ自体に句のねらいがありそうだと気付き、気付いたときには作者の術中にはまってしまっているのである。つまり前者と後者の読みが揺れながら重なったり離れたりすることで、この句はようやく精彩を発揮するというわけだ。そこらへんに、変であり滑稽であると感じさせる仕掛けの秘密があると読んだ。『中肉中背』(2008)所収。(清水哲男)




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