久留米石橋美術館前のバラが満開。夜はムツゴロウの蒲焼きなどご馳走に。(哲




20080519句(前日までの二句を含む)

May 1952008

 二重にじ青田の上にうすれゆく

                           作者不詳

日につづいて虹の句。こちらは農村の光景だ。どこまでも広がる早苗そよぐ青田の上に、虹がかかった。それだけでも美しい絵になるが、かかった虹は珍しい「二重にじ」だった。作者以外、周辺には人影がない。月並みな言い方だが、まるで夢を見ているみたいだ。空に写った天然の色彩のグラデーション。それが見ているうちに、外側の虹(副虹)からうすれていき、主虹もはや消えかかってきた。虹は空に溶けていくわけだが、このときに作者もまた風景の中に溶けていく感じになっている。束の間の至福のとき、とでも言うべきか。「虹」と「青田」の季重なりなどと野暮なことは言いっこなし。自然がそれこそ自然にもたらす光景や風物は、いつだってどこでだって季重なりなのである。こしゃくな人間の知恵などは、この圧倒的な季重なりのシーンの前では、吹けば飛ぶようなものではないか。作者はおそらく子供なのだろうが、この素直な汚れのない感受性には打たれるし、大いに羨ましいとも思ったことである。国定教科書『国語・四学年(下)』(1947)所載。(清水哲男)




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