憲法記念日の東京は雨降り。落日の写真は皮肉じゃないつもりですが(笑)。(哲




20080503句(前日までの二句を含む)

May 0352008

 一つづつ花の夜明けの花みづき

                           加藤楸邨

が人を惹きつける大きな理由は、下を向いて咲くからだ、と数日前テレビで誰かが言っていた。桜の花下に立った時、まさに花と対峙している心持ちになるのは、それもあるのだろうか。ふつう花というのは、太陽をもとめて空に向かって咲くのが一般的だという。花みずきは、萌えだした葉の間に、ひらひらとまさに空に向いて開く(実際の花は真ん中の緑の部分らしいが)。最寄り駅までの下り坂、花水木の並木道を十年以上ほぼ毎日歩いているが、新緑も紅葉も、赤い実も枯れ姿も、それぞれ趣があり、街路樹として四季折々楽しめる。でもやはり、真っ白な花が朝日をうけて咲き増えてゆく今頃が、最も明るく美しい。芽吹いてきたな、と思うと、花がちらほら見え、朝の日ざしに夏近い香りがし始めると、ほんとうに毎日輝きを増し、一本一本の表情がぐんぐん変わってゆく。この句を読んだ時、毎年目の当たりにしながらはっきりと言葉にし得なかった花みずきの本質が、はらっと目の前に表れたという気がした。特にこの一語が、というのではなく、五・七の十二音の確かさと詩情、一句から立ちのぼる香りが、まさに私の中にあった花みずきなのである。『俳句歳時記 第四版』(2007・角川学芸出版)所載。(今井肖子)




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