今日は「みどりの日」とばかり思ってた。「昭和」も遠くなりにけるかな。(哲




20080429句(前日までの二句を含む)

April 2942008

 春昼や魔法の利かぬ魔法瓶

                           安住 敦

空状態を作って保温するという論理的な英語「vaccum bottle」に対し、何時間でもお湯が冷めない現象に着目し、日本では「魔法瓶」と命名された。どんなものにもよく書けるマジックインキ、愛犬に付いた草の実(おなもみ)がヒントとなったマジックテープなども、従来にない不思議な力を強調した「魔法/マジック」の用法だが、「魔法瓶」はなかでも突出して絶妙なネーミングである。他にも、来週に控える「黄金週間」やめくるめく「万華鏡」なども腕の立つ日本語職人の手になるものと思われる。掲句は、茶の間に鎮座するポットの仰々しいネーミングにくすりと笑う大人の視線だが、いかにもうららかな春の昼であることが、笑いを冷笑から、ユニークな名称の背景にある人間の体温を感じさせている。希代の発明でもあった魔法瓶だが、落とすと割れてしまうという頑丈さに欠ける一面と、1980年代の水を入れると自動的に沸かし、そのまま保温できる電気ポットの登場で、またたく間に姿す。わずか後十数年で「魔法」の名を返上することになろうとは作者にも思いもよらぬことだったろう。しかも最近では、自販機で「あたたかい天然水」が売られている。飲料水を持ち歩くのがごく普通になった現代ではことさら驚くことではないのかもしれないが、白湯の出現にはいささかびっくりした。『柿の木坂だより』(2007)所収。(土肥あき子)




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