詩人の古賀忠昭さんが亡くなった。64歳。いろいろな意味で残念な死だ。(哲




20080422句(前日までの二句を含む)

April 2242008

 掃除機は立たせて仕舞ふ鳥雲に

                           杉山久子

集には同じ季語を使った〈あをぞらのどこにもふれず鳥帰る〉という叙情的な魅力ある句もおさめられているが、掲句により惹かれるのは、それぞれの居場所ということについて唐突に考えさせられるところだ。掃除機は毎日使用されるものだが、その収納場所、おそらくそれはどの家庭でも部屋のどこかの片隅にすっきり納められたところで、生活空間が戻ってくる。春のある日、彼方へと飛び立つ鳥たちの姿を思い、鳥もまた雲へと消えたところが、正しい収まりどころであるかのような、漠然としたやりきれないわだかまりが、ほんのちらっと作者の胸をよぎったのだろう。その「ほんのちらっと」思う心が、年代や性別を越えて重なり合うことで、俳句にはさざなみのような共感を生まれる。壮大な自然の営みや、日常の瑣末な空虚感などにまったく触れることなく、しかしそれはいつまでも揺れ残るぶらんこのように、心の中に存在し続ける。「藍生」「いつき組」所属している作者の第二回芝不器男俳句新人賞の副賞として出版された本書は、写真との組み合わせで構成され、美しく楽しく値段も手頃。〈人入れて春の柩となりにけり〉〈白玉にやさしきくぼみあれば喰む〉『春の柩』(2007)所収。(土肥あき子)




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